2006年8月30日水曜日

海ガメ

営業終了間近、沖に浮いている大きな物体を発見。大きさが大きさ故に、万が一人間だったら・・・こうしてあーして、なんて打合せをし、ライフガードのKに現場確認へ行かせる。



レスキューボードで現場確認中、水面にいる彼が打合せにない手信号と口パクで何やら訴えている。



何?!!!!ぃーーーー!



うーみーがーめーでーかーい!



カメかい。



曽我浦に来て2体目だ。昔々曽我浦にカメが産卵しに来ていたなんて噂も聞くので決して珍しいことではない。



しかし、いくらカメでも1.5mもあれば大変な腐乱死体で、そのまま放置すれば問題になる。それより大切なことは、海で仕事をする者として、「海で生まれたものは海へ、陸で生まれたものは陸へ」の自然法則に則ってどうしても処置してあげたかった。このまま海岸へ打ち上げられればきっと陸に上げられ償却されてしまうだろうから。



最初に考えたのは引き上げて砂浜に埋めること。



砂浜に埋めれば砂浜の中に住む微生物に食され、再び海の中へ帰ることになるからだ。しかしこの時間満潮。砂浜に穴を掘るには困難を要した。そこで次に考えたのは海の中へ沈めること。ロープをつけ海中にある土嚢を錘に水中で引き下ろす。



しかし腐乱しているカメでしかも1.5m・・・そんな簡単に沈むわけがなく、20回以上トライしてなんとか全身を沈めることに成功・・・冥福を祈る・・・再びカメとして生まれ変わっておいで。



曽我浦は昔からマッコウクジラやイルカなど様々な生物の死体が打ち上げられる。打ち上げられやすい地形なのであろうが、珍しい生物の誕生も多いことからこの海岸特有の食物連鎖なのであろうと結論付けている。



そう曽我浦は「生命の海岸」なのである。



2006年8月14日月曜日

無に神

曽我浦で事故が起きた。隠す必要もないし記憶に残したいので書き留めておこうと思う。



ライフガードの使命とは「事故を未然に防ぐ」ことで、決して自分の身を挺して人名を守ることが目的ではない。溺れる人を救助することや行方不明になっている溺水者を引き上げてくることなどは、相当な体力と精神力が必要であるからだし、実際の事故は突然で、目の前で発生した時に100%救助できる人間など存在しないからだ。訓練していないものが無理をすれば自分が死ぬ可能性だってある。



とはいっても万が一事故が起きた時、事故を拡大させないためのファーストコンタクトを行うのは我々ライフガードである。だからその時指をくわえているだけでは一生後悔してしまうし再びライフガードの業務に就こうとなんて思えるはずもない。



忘れもしない事故がある。ダイビングの事故で捜索に入ることになり、水深20mのところで仰向けに沈んでいる溺水者を発見し引き上げCPRを行ったが助けることができなかった。その時の自分に出来る限りのレスキューを行ったつもりだが、結果助けられなかったことの後悔が頭に残り、こうすればもしかしたら、あそこでこうだったら・・・など頭の中で様々なことがめぐり、海を見ることもダイビングの器材を見ることもトラウマになり、何もかもが嫌になってしまった。



それから約10年経ち、自分の会社が管理するリゾート内で初めての事故。トラウマは海に対する恐怖を植えつけたが、今回は助けることが出来なかったどうしようもない悔しさが頭に残る。自分のトレーニングが足りないのか、事故が起こさないための規制や制限が足りないのか・・・事故を起こさないためには海に入れないことしかないのか・・・何を努力したらいいのか????レスキューチームワークが不足しているのか??!!



それに15才の少年がなんで海で死ななきゃいけなかったんだろう、海の神様は残酷だと思った。ここまでくると神まで疑いたくなる。でも何か答えがあるんだよ、きっと。



無に神。



この事故を一生忘れず、二度と同じような事故を起こさないために精進し続けることを誓い彼の冥福を祈りたい。