2018年3月6日火曜日

東京五輪OWSを館山で開催することを推奨したい理由-1

東京五輪で開催されるオープンウォータースイミング(以下OWS)開催を千葉県館山市で行うことを推奨したい。

長期にわたり努力を続けている関係者にとっては勝手なことを・・・とか異論などがあると思いますが、OWS指導者の端くれとして、または個人的な意見としてまとめてみたい。


日本におけるOWSの基礎となったのは、日本泳法、競泳そして臨海学校などで行われる遠泳である。
実は遠泳には非常に長い歴史があって、「長く泳ぐ」という意味では江戸時代にまでさかのぼる。
江戸時代、各藩において武芸十八般の1つとして水術の修得が奨励された。
その中でも津藩が採用した日本泳法「観海流」はより長く泳ぐために発生したもので、現代の平泳ぎに似た泳法であった。

観海流 に対する画像結果


三重県観光連盟公式サイトより引用


陣太鼓にあわせて掛け声をかけながら集団で遠泳を行う「古式沖渡り」などは、現在の遠泳でも似た習慣がある。

明治時代になるとこれらの泳ぎを修得する機会として、遠泳が海軍や学校教育において採り入れられた。

昭和期にはさまざまな形式で遠泳大会が各地の海水浴場で開かれた。

わが母校である筑波大学では、1902年に日本の大学として最初に授業として水泳実習 (臨海)取入れるなどにの歴史がある。
現在では伝 統的な遠泳中心のプログラムからスキン・ スクーバダイビング、カヌー、ボードセーリン グ、釣り・手こぎボート、バイアスロン、ライ フセービング、ビギナーズコースなど多彩な実習となっているそうだ。


さて、一方OWSは、海・川・湖などの自然環境を舞台に泳ぐ、トライアスロンの水泳の部分が独立したような水泳競技のことである。
プールで泳ぐ競泳種目と異なり、選手同士の身体接触や駆け引きが多くみられ、潮の流れや波の影響を考慮したレース戦略を練ることから「泳ぐマラソン」とも言われている。

1980年代に行われた西オーストラリアの海峡レースを基礎にし、国際水泳連盟が競技規則を作成し誕生した。
現在は国際水泳連盟が統括している5つの水泳競技種目のひとつで、1991年から世界水泳選手権の正式種目になり、2008年から北京でオリンピックの正式種目となった最も新しい水泳競技種目である。
世界水泳選手権では男女5km・10km・25km が実施種目となっており、オリンピックでは男女10km が実施種目となっている(オリンピックにおいてはマラソンスイミングと表記)。
また、OWSの基礎となったのは海峡横断泳である。 イギリス、フランス間ドーバー海峡横断は有名で、1875年にイギリス人マッシュー・ウエッブが21時間45分をかけて直線距離34kmを泳いだ記録が現存する初横断者である。
他にも、1950年から開催されている私も参加した西オーストラリア、ロットネスト島海峡横断レースは、現在約3,000名が参加する世界最大規模のオープンウォータースイミング大会となっている。



国内では、1925年から実施されている熱海初島横断団体泳(1925年初開催後中断、1948年から再開し現在まで毎年開催)が古い海峡横断泳として有名で、全国のOWS愛好者憧れの大会である。

1996年8月10日には我が国初の本格的な競技大会として福岡国際オープンウォータースイミング競技大会が福岡市の大原海水浴場で開催された。

2012年ロンドンオリンピックに貴田裕美選手、平井康翔選手が初めて日本代表に選出され、現在も国内外でOWSの先駆者として活躍している。

2016年の希望郷いわて国体より、5kmの距離で、国体の正式種目となるなど、OWSの普及に拍車がかかる。

現在OWSは1千万人の潜在的参加者がいるといわれる新興生涯スポーツに発展し、全国各地で大会や参加者が増えている。

そして、注目すべきはOWS参加者がマラソンランナー同様、全国の開催地に移動する交通機関や宿泊、食事、観光などスポーツによる地域貢献にも繋がっている傾向にあり、今後の展開によっては海や河川を利用したスポーツツーリズムのツールとして活用され、将来OWSがスキーやゴルフに次ぐ新しいスポーツツーリズム種目へ発展していく可能性は高い。


【問題と課題】
OWSは愛好者からオリンピック種目までに発展している。
しかし、OWSは海や河川がフィールドとなるため、事故が起きた場合大きな問題となってしまう可能性が高い。
OWSが後発スポーツであるからこそ、早期なリスクマネジメントが必要なのではないかと問題意識を持っている。

具体的には国内におけるOWS事故の多くがスタート5分以内に起きている点、オープンウォータースイミングの知識や経験が浅いプール競泳経験者が多い点を見ると、参加者のリスク認識の低さが、安易な大会参加や前準備不足を招き、事故につながっているのではないかと考える。

これは、OWS参加者の多くが、スイミング競技者からステップアップしているところからも予想をしている。

つまり、プールとオープンウォーターでは泳ぐ技術だけでなく、準備、環境、精神的な心構えなど多くのリスク認識に違いがあるにも関わらず、それらを理解せずにOWSへ飛び込む参加者が多いからではないかと考えた。

一方、日本水泳連盟のOWS指導課程におけるリスク認識は、水泳競技種目の「プール競泳」に準じて技術的な内容が中心となっており、プール水泳とOWSとの危険性の違いや経験者からの心構えなど参加者のリスクを認識する内容が今後増えていくことを期待したい。

その2に続く

【参考文献】
わが国におけるオープンウォータースイミング(OWS)の成長発展に関する研究, 鷲見全弘2008 Channel swimming association, data file
OWS競技に関わる安全対策ガイドライン 日本水泳連盟2010
日本水泳連盟編『オープンウォータースイミング教本』大修館書店,2006
日本水泳連盟編『水泳コーチ教本 第2 版』大修館書店,2005
日本水泳連盟編『水泳指導教本』大修館書店,2002
鈴木大地,10km オープンウォータースイミングの生理学特性-OWS の心拍数を中心に,
『日本オリンピック委員会/日本コカ・コーラ スポーツ科学基金 (アクエリアス基金)2006 年度研究報告書』日本オリンピック委員会,2006



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